2002-2004年度 学力向上フロンティア事業研究紀要
       教科学習の見直しと評価の改善


4節 算数科の評価の改善

▼「過程の学力」の評価

(1) dカードの利用
 関心・意欲・態度,考え方等,問題解決過程で培う学力が重要視されているが,学習終了後の記述式のテストでは,前述したように評価しにくいものである。そして,関心・意欲・態度にも,単なる熱心な姿のみを示すのではなく,問題解決過程に教科独自の内容が存在する。例えば,算数科においては,次に示す「dカード」のアの内容がそれである。
 「dカード」は,授業中の問題解決過程で教師が育てたい力(過程の学力)を下のようなア・イ・ウ・エの観点別に示したものである。そして,授業中の子どもの発言や考え方,細かな反応の中に,それぞれの観点に示すような力が認められたとき,「今の○○さんの考えは,簡単にしようと工夫していたね。工夫する脳に1点。」とか,「前に習ったことを使って考えているね。考える脳に1点だよ。」というように,その場でよさを賞賛したり,どの観点の力かを伝えたりしながらポイント化した。それを,「dカード」に記入させることで,自己評価の視点を明確にし,自分の伸びを感じさせながら算数の学び方を身に付けさせている。

 このように,授業中の児童に見られる細かで価値ある反応をその場その場でタイムリーに見取り,継続的にカードに記録していく評価活動は,教師が児童にどんな力をつけていけばよいかを毎時間意識することになるとともに,より正しい子ども理解・評価につながっていく。
 また,児童一人一人にとっても,自分にどんな力がついてきたのかを意識させることができる。同時に算数科において問題解決する際,どのように考えていけばよいかを指導することにつながるのである。(指導と評価の一体化の成立)
 そこで,特に授業中においては,ア「関心・意欲・態度」(工夫する学力),イ「数学的な考え方」(考える学力)の力を育てることに重点を置いている。

▼ 「過程の学力」の評価の実際
 <実践事例>2年 かけ算(2)の@「かけ算のきまりやひみつを見つけよう」

 下記のようなcカード(単元の指導計画・評価規準)には,評価規準と共に「育てる過程の学力」の項を設け,どの教師もがその時間に育てたい過程の学力を明確化・共有化し,指導と評価に生かせるようにしている。
  毎時間の指導と評価の計測 PDF 19k

 また,以下のような,低学年用,中高学年用の学び方カードを活用して算数科の4つの観点について評価している。オ「なかよく学ぶ態度」は,友達とのかかわり合いや学び合いを高めるためにすべての教科において付けたい力として共に評価している。
  dカード(1年用) PDF 15k      dカード(3年用) PDF 16k

▼ 「結果の学力」の評価
 学習結果としての学力(ウ・エの力を中心に)の評価は,単元ごとに全員が身につけてほしい内容を整理した「eカード」の結果が個々のカルテとなる。

(1) 多様な評価
 それをもとに学習過程の中で適宜評価していくとともに,最終的な知識の獲得・確実な理解をめざして,次のような多様な評価により個に応じた支援が行えるようにしている。
 ・ 毎日継続して取り組ませ,評価する(計算ドリル)
 ・ 単元の過程で定着させ,随時評価する(eカード)
 ・ 学習後の定着を評価する(算数の学習)
 ・ 単元終了時に評価する(県版テスト)
 ・ 年間(学期)繰り返し,定期的に評価する(eカード)

(2) 単元末の評価
 本校では,単元末において目指す結果としての到達度目標,及び評価規準(A・B・C)を次のようにとらえることにした。


(3) 学期末における総合的評価と評定の手順
 ○ 単元セットの「aカード」「bカード」「cカード」を吟味する。
 ○ 毎時間,評価規準でABC評価(補助簿の作成)を行う。
  また,毎時間「過程の学力」を評価し,「dカード」に書きこませていく。
 ○ 単元が終わると,「eカード」(単元の評価テスト),県版テストを行う。
 ○ 単元の評価をまとめる。


 ○ 学期末に全単元を終了すると,1学期の評価のまとめをする。


▼ 「結果の学力」の評価の実際
  
 ・ 単元の基礎的・基本的内容を整理した「これだけはできるようにしておこ
  う」(eカード)を単元末(小単元末)に行い,定着度を確かめる。
 ・ eカードの結果を子ども自らが見取り,補充的な学習と発展的な学習のコ
 ースのいずれかを選択し学習する。
 ・ 単元の学習の終了時に,県版テストで,単元の最終学力の評価を行う。
 ・ 月末や学期末などにも必要に応じてeカードでの練習を繰り返し,基礎・
  基本の定着を図る。